狐の嫁入り

小説創作ブログ! のつもりでしたが、なんかだいぶ違う気がします……

最高に面白いエンタメ小説決定戦!

高校の卒業式の日のことです。私は突然、皆がいる教室で、担任の先生に

「ミズノ、前に出てこい」

と言われました。特に何をした記憶もなかったのでどきどきしながら前に立つと、封筒に入った何かを手渡されました。先生からです。愛の告白? まさか。俺たちは男だぜ。それは、三年間の間に図書館で借りた本の記録でした。

「多読者賞」

学年で借りた冊数一番、ということで表彰を受けたのです。

小さな札が書かれたあの便せんは、今でも私の宝物です(実家のどこにしまったかな……?)

 

なんてという、ささやかすぎる自慢エピソードがあるくらい、高校生時代の私はそこそこ本好きでした。3年間で70冊くらいだったかな? そんな多くない気もしますが、私の高校では読書はあんまり流行っていなかったのです。

 

美しい思い出を語りすぎて失礼しました。ミズノです。

さて、Twitterの読書垢をがむしゃらにフォローしていたら、いろいろな人たちが自分の読んだ本の記録をTwitterに残しているのを見つけました。私も、自分の記憶が遥か彼方に消え去ってしまう前に、自分の好きだったものの総ざらいをしておきたい……ということで思いついたこの記事。未来の自分と、自分と趣味の合う読者に届くことを願い、思いつく限り、ばばばっと書いていこうと思います。

新しく読んだ奴はTwitterに上げてこうと思います。

 

ちなみに当時の私は、乙一宮部みゆき、スティーブンキングを三大神とあがめたてていました。

 

涼宮ハルヒの憂鬱 

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

 

初めてラノベに出会ったのはこの本だったと記憶しています。ネット世界へ触れるのが私よりも早かった弟の本棚に置いてあったものを、勝手に借りていました。

主人公キョンの一人称視点に、ラフで崩れた文体、軽妙な語り口で自分の周りの出来事を語っていくラノベのスタイルは、当時の私には非常に新鮮に移りました。

変な部活を結成して仲間とわちゃわちゃする系小説の元祖ともいうべき本作。これにガチはまりしたのは、私の人生にとってプラスだったかマイナスだったか、判定に迷うところです。

キョンハルヒ長門、朝比奈さん、小泉、鶴屋さん……といった個性的な面々が織りなす物語は面白く、「自分もこんな奴らと一緒になって楽しく過ごしたい!」という気分にものすごくなったものです。「学校へ行こう!」シリーズもちょっと読みましたがそこまでハマらず……どうも、私はSOS団の面々が相当好きだったみたいです。

もう一度彼らの活躍を見たいところですが……最新刊はきっともう出ないんですよね?

 

 

乙一「GOTH」

GOTH 夜の章 (角川文庫)

GOTH 夜の章 (角川文庫)

 

ラノベと言えば電撃、ですが、当時の私はラノベと言えばスニーカー文庫だと思っていました。それは涼宮ハルヒの憂鬱のこともありますが、GOTHのせいでもあります。

乙一を知ったのは、十六歳でデビューした天才、という触れ込みをどこかで見たからで、当時、ぼんやりと小説を書きたいと思っていた自分は、そこから何か学べないかと思っていました。最初に手に取ったのは、「夏と花火と私の死体」。これが語り口も話の展開もオチも面白い。これをきっかけにハマり、次々に乙一を読破しました。その中でも最もお気に入りなのがこれです。

 

この本で初めて知ったのは、「叙述トリック」という技法の存在。今でも私の中では、ミステリー、と言われるとこの本が真っ先に頭に浮かびます。ミステリなんかは、全然読んでいなかったんですね。

「犬」「土」「声」など、読者のことをよくわかっていないとできないような仕掛けの数々に魅了されました。シンプルでわかりやすい文体、奇妙だけれど魅力的な二人の主人公。巧みなストーリー展開と畳み方。語り口がちょっと中二っぽいのも、高校生の頃の私にはかなりハマったようです。

が、その時には乙一は新刊を出しておらず、既刊を探して読む日々でした。その後、筆名を変えて著作を出していることを知ったのはそれから数年後、大学四年生の時、大学生協でたまたま手に取った「吉祥寺の朝比奈くん」がきっかけでした。なんかこの作風、乙一っぽいな……と思ったのです。

……しかしなぜこんな紛らわしいことをしたのかいまだに解せません。

 

 乙一「失はれる物語」

失はれる物語 (角川文庫)

失はれる物語 (角川文庫)

 

残酷な話も切ない話も書ける。GOTHとは対極に来る乙一の短編小説集の一つです。

GOTHであった巧みなストーリー展開はそのまま、題材は人の心の温かさや、別れ、出会いといった普遍的な感情を描きます。切ないのと残酷なのは、違っているようでいて実は近い感覚なのかもしれません。

手を握る泥棒の物語」や「しあわせは子猫のかたち」なんかがお気に入りです。

……知らないうちに表紙の絵が変わってて驚きました。 

 

乙一「さみしさの周波数」

「失はれる物語」と同じ雰囲気の切ない話が中心。最初の一篇「未来予報」は、タイトルの通り未来予知を題材にした快作です。甘くも切なく構成の妙も冴える、最高の短編の一つです。

ただ、短編集としては文句があって、4編中2編が「失はれる物語」に収録されているのがいかがなものか……乙一はかなり遅筆な作家だったなと強く感じます。

 

乙一「天帝妖狐」

天帝妖狐 (集英社文庫)

天帝妖狐 (集英社文庫)

 

乙一の紹介はこれでラスト。彼の第二作です。この小説を読んで乙一の才能を確信した方も多くいることでしょう。

トイレの落書きを題材にした「The Masked Ball」と、こっくりさんに体を奪われてしまった男の悲劇を描いた表題作「天帝妖狐」を収録しています。

ジャンルとしてはホラーに当たります。デビュー第一作がホラーということもあって、当初はそういう路線で新作を書いていたようです。

怖さと残酷さと切なさが共存する、乙一のエッセンスが詰まった短編集です。

 

宮部みゆきステップファザーステップ

ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

 

乙一を読んで以来、ミステリーに関心を向け始めた私は別の作家を開拓し始めました。その結果行き当たったのがこの本です。

社会派ミステリーや時代物など、硬派な作品を多く描いているイメージのある宮部みゆきですが、それだけではありません。ライトタッチな楽しい短編も書けてしまうのです。なんでも書ける希代のストーリー作家というほかありません。なかなか分厚い本に手が出せなかった私にも、短編のミステリということで手が出しやすかったのです。

泥棒+大人よりずっと賢い双子、が織りなす事件の数々。この本のおかげで、ほかの超長編を読む下地ができたなあと思っています。それなりに賢いはずの泥棒を手玉に取っていく可愛らしい双子の言動の数々は必読。

一卵性双生児、のフレーズが今でも異様に頭の中に残っています。

 

 

宮部みゆき「本所深川ふしぎ草紙」

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)

 

宮辺みゆきの歴史もの。本当にこの人は何でも書けるんだなと舌を巻きます。歴史ミステリの連作短編集です。

私のお気に入りは最初に収録されている「片葉の葦」。身分違いのお嬢様に恋する男が、父親殺しの疑いをかけられたお嬢様の無実を信じてあれこれ頑張る話です。結ばれない恋の美しさよ……そういう話ではないんですけれど。

歴史人情物、ミステリー、さくっと読める長さ。歴史ものは、多数の人物が登場し大きな歴史のうねりの中で各々が各々の目的をもって進むため、長くて読むのが大変です。その後の私は司馬遼太郎の「燃える剣」に挑戦したのですが、ストーリーと直接関係ない描写が苦手で途中断念したのを覚えています。

その点、一話完結で切れのいい終わり方をする短編が収められたこの本は、誰にでもお勧めできる、歴史ミステリの入門のような本だなと思います。とても読者層の厚い本だと感じます。

……ちなみに、私は玄人ぶっている割に、入門以降のステップはあまり踏めていません。

 

宮辺みゆき「模倣犯

模倣犯〈下〉

模倣犯〈下〉

 

何でも書けるものすごい作家ですが、中でもこの本は宮部みゆきの真骨頂とも言うべき作品です。少女ばかりをターゲットにした劇場型犯罪。自らの快楽のために人を不幸に陥れていく真犯人の狂気にはホラー顔負けの恐怖を感じます。

何が真骨頂かと言いますと、犯罪者と被害者だけでなく、犯罪者の友人、被害者の家族……犯罪の周りにいるすべての人たちの恐怖や悲しみを、これでもかとばかりに克明に描いてくる点です。フィクションのはずなのに、まるでノンフィクションのよう。

ドラマ版のピース役には中居くんを当てているみたいですが、配役がハマりすぎててヤバいなと感じます。一見人あたりがいいようで見えて、どす黒い闇を抱えてそうな感じがぴったりです。天才的なキャストです。

他の作品もそうですが、宮部みゆき作品の悪役は「生まれつき根っからの悪」な人が多いですね。悪役にも泣かせるエピソードを付与してくるジャンプ方式(私が勝手にそう呼んでいる)とはだいぶ勝手が異なります。

単行本で上下二冊。しかも上下段印刷という超大作。当時の私はこいつを読んで、俺もこれで読書通だぜと謎の自信をつけたものです。

しかしアマゾンのクリック数少ないですね……

 

宮部みゆき火車

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

 

宮部みゆきの長編小説はいくつか読みました。上にあげた「模倣犯」。疑似家族の惨殺事件を描いた「理由」。超能力者を題材にした「龍は眠る」、犯人を追って登場人物が夜を駆けるサスペンス「スナーク狩り」。ですが、中でも一番印象に残っているのが、この「火車」です。クレジットカード破産を題材にしたこの小説、休職中の刑事が、あるきっかけからある女の人の行方を追っていく話です。

この小説に何よりも印象的なのがそのラストで……ネタバレになるから書けないのですが、こんな変わった企みに満ちた長編小説があるんだと驚いたものです。

ちなみに読み方は「ひぐるま」ではなく「かしゃ」なのでご注意を。

 

森見登美彦太陽の塔

【Amazon.co.jp限定】 太陽の塔 (特典:新潮文庫の100冊キュンタ 壁紙ダウンロード)

【Amazon.co.jp限定】 太陽の塔 (特典:新潮文庫の100冊キュンタ 壁紙ダウンロード)

 

「四畳半神話体系」「有頂天家族」「夜は短し歩けよ乙女」がアニメになり、最近では「ペンギンハイウェイ」もアニメ映画になりました。まさに今を時めく作家、森見登美彦のデビュー作です。

森見登美彦の小説はファンタジー色が強く、確かにアニメーションとの親和性めっちゃ高そうだなあとは思っています。

が、その中でもアニメーションとの親和性が微妙に悪そうなものがありますが、おそらくそれはこの、「太陽の塔」です。

滅茶苦茶笑った小説。私が森見登美彦を知った最初の一作でもあります。 モテない男が可憐な乙女を追い回す構図は「夜は短し」に通ずるものがあります。頭でっかちなくせにヘタレ、妙に文語的な語りをする頭のおかしい(いい意味で)「私」には、共感する部分もあり、ちょっと違和感を覚えるところもあり、愛しくもある。吹き出してしまうような言い回しが十ページに一回くらい出てきます。

「奇遇ですねえ!」

というのは、夜は短しのほうだったか太陽の塔だったか。頭はいいはずなのに妙に無防備な乙女も、またキャラが濃くて割と好きです。

個人事業主というのは誰もが各々の個性を持ったものと思いますが、中でも際立って独自の魅力を持った作家が森見登美彦です。本人のブログの文体も妙に文語めかしていて……あれは読者受けを狙ってキャラを作っているのかと思っていたんですけれど、実はあれが素だったりするのかもしれないなと最近は思い始めています。

 

 

スティーブン・キンググリーンマイル

高校一年生の時、乙一の小説を貸すのと引き換えに友人から借りた一冊。当時は、二分冊でなく、薄めの文庫本に六分冊しているのをひとつずつ借りました。

乙一信奉者だった私は、日常から乖離しすぎないちょっとだけ不思議な話が大好物だったので、当然スティーブンキングには一瞬でハマりました。

ジョン・コーフィという大柄の囚人が刑務所に連行されてくるところから物語はスタートします。けれど、その男は非常に穏やかで心優しく、とても少女を強姦の上殺したようには見えない――。グリーン・マイルというのは、処刑用の電気椅子に向かうまでの道のりを示す言葉で、当然、この小説の登場人物たちはほとんどみな、その道を歩き処刑される運命にあります。

囚人コーフィの慈愛に満ちた心が胸を打つ傑作です。

 

スティーブン・キングゴールデンボーイ

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

 

キングの「恐怖の四季」シリーズ。表題作は、素直でまっすぐな少年が、元ナチスの老人に興味をもってしまったところから道を踏み外していってしまう話。学校の先生の疑惑を逃れようとするシーンは緊張の連続ですが、今思い返せばかなり笑えるところだった気もします。

表題作は「ゴールデンボーイ」とありますが、この作品集には、もうひとつ、死ぬほど有名な作品の原作が収められています。それは、

ショーシャンクの空に

です。

原作のタイトルは「刑務所のリタ・ヘイワーズ」。世の中には希望なんてないと悟る模範囚のレッドが語り部。そんなレッドのもとへある日、アンディ・デュフレーンという男が近づいてきます。彼は妻殺しの罪で服役されている男で、アンディに、ロックハンマーの調達を依頼します。訝しがりながらもレッドは承諾する。そこから二人はだんだんと友情を深めていき――

先の見えない刑務所生活の中で、一筋の希望をつかむために奮闘するアンディの姿には胸を打たれます

「希望はいいものだ」

という、ありきたりなメッセージが、これほど胸に迫る作品はこれまでに読んだことがありません。

 

映画も3周しました。

なんとプライムビデオでただで見られます! アマゾンの回し者感が半端ないですね

 

スティーブン・キングスタンド・バイ・ミー

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)

 

巷では、スタンドバイミーと名の付く映画や音楽であふれかえっていますが、私にとってのスタンダバイミーはベン・E・キングのスタンドバイミーこそが本当のスタンドバイミーだと思っています。

有名すぎる表題作なので紹介不要かもしれませんが、まだ見つかっていない子どもの遺体を、4人の少年が探しに出かける「少年たちの冒険もの」です。私はこの話が凄く気に入って、似たような話を何回か個人的に書いています。

冒険と少年の成長、そして友情。これは永遠のテーマであり、ここをがっちりつかんでいるからこそ、力強くで普遍的な感情に訴えかける話になっているのだと思います。

 

高校生の時は冒険と死体の話にわくわくし、大学生の時は、違う人生を歩み始めてしまった友人のことを思い出し、社会人になると家族の葛藤に共感する。読むたびに新しい発見がある、まさに「不朽の名作」だと私は思っています。

…ちなみに、私の書いた冒険ものはこちら→https://ncode.syosetu.com/n2742ey/

ジャンプ小説新人賞(短編)で一次を通った作品です。それなりに評価をされているのはやはり、成長と友情と冒険は物語の王道ということなんでしょう。

同時に収録されている「マンハッタンの奇譚クラブ」は、不思議なクラブに招待された男の話。おどろおどろしいムードの中で展開される話は多少ありきたりですが、それよりも、奇譚クラブの建物のいわくありげな描写が妙に想像を刺激します。

後、恐怖の四季シリーズはタイトルの和訳がちょっと不思議。確かに「Body」を「死体」って訳してデカデカとタイトルにするのは難しいと思うけどさ……

 

O・ヘンリ「Oヘンリ短編集」

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

 

友人「Oヘンリは短くていいよね?」

私「え? 誰それ」

という会話がきっかけで手に取った一作。短くてキレのある話を求めていた私に、この短編集はクリーンヒットしました。

飢えと寒さをしのぐために刑務所に戻るべく悪行を重ねるが、かえって人から感謝されてしまう男の話「警官と讃美歌」。貧しい夫婦が、クリスマスプレゼントを買うために、相手に内緒で自分の大切なものを売り払ってしまう「賢者の贈り物」など。短い話で意外なオチ方をする短編集。

それと、この作者の何よりもいいところは、人生に対する前向きな姿勢とユーモアに満ち溢れているところ。なんだか、人の感情を煽ったり逆なでしたりするコンテンツが多くなってきている気のする昨今、こういう話には心が洗われる気持ちになります。

 刑務所の中で書いたとは思えない前向きさです。

 

 恩田陸夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

 

 恩田陸の代表作。本屋大賞の受賞作品でもあります。

高校生がひたすらに長い距離を歩く「歩行祭」の話。恩田陸さんの母校にこういう行事があったみたいです。それと、早稲田大学のイベントにもこういうのがあるそう。そのあたりが発想の起点になった作品かなと思います。

主人公の甲田さんと西脇くん。二人は一見無関係に見えるけれど、どこかにているところもあり、友人からは恋人じゃないかと勘繰られる。二人の間にはある秘密があり、その秘密をめぐって、主人公の甲田さんは歩行祭にある賭けをする……

メインの二人の関係と、それを取り巻くサブエピソードが、歩行祭の進行と合わせてスムーズに展開されます。友情あり、恋愛あり、ホラーっぽい要素あり、若干ミステリありと、あらゆる要素を詰め込んだ名作の青春小説です。

主人公が歩く系の話は「死のロングウォーク」、後「スタンドバイミー」なんかもそうですね。皆で並んで一緒に歩く。その時、参加者たちは普段の目まぐるしい日常から離れて、自分や他人と向き合わざるを得なくなります。その時、今までの関係を見返したり、意外なことがわかったり、普段考えなかった将来の関係に思いをはせたりする。

「皆で並んで一緒に歩く。それだけのことが、どうしてこんなに特別なんだろう」

というキャッチフレーズだったか。確かにたったそれだけのことだけれども、それはある、日常から切り離された特殊な空間にいるのと同じことなのです。まさに、物語の舞台としてとてもいい設定なのだと思います。

皆で歩く系の話で一番有名な奴、それと後味も凄くいい。オススメ! と私は思います。

 

森絵都「空に舞い上がるビニールシート」

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

 

 優しく穏やかな文体で、人の心の機微を丁寧に救い上げる素敵な短編集。彼と仕事との間で悩むパティシエ見習い、真面目な社会人大学生、動物保護活動にいそしむ主婦、NPO団体の事務員……境遇も立場もさまざまな人々を描く短編集。

派手な出来事を取り扱った短編は多くありませんが、確かな筆致でどんどん読ませる。そして、ふと目にしたフレーズに頭がじんとしびれる。そんな本です。

直木賞も受賞した名作です。

 

森絵都「カラフル」

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)

 

 愛らしい表紙、愛らしいキャラクター、愛らしい語り口で、子どもにも大人にも読める。そのくせ、大の大人の息を止めるような鋭い切り込みがある――森絵都の作品はこの二冊しか読んでいませんが、読みやすさと心理描写がばつぐんに上手。そして、穏やかでどこか応援したくなるキャラクター造形が魅力です。

アニメ映画にもなった名作。森絵都の作家としての才能を強く感じられる一冊です。