狐の嫁入り

小説創作ブログ! のつもりでしたが、なんかだいぶ違う気がします……

最高の小説はどれだ?

 

はじめに

本を読むきっかけは中学生のころ(具体的には忘れた……)。確か弟の部屋から発見した「涼宮ハルヒの憂鬱」と、「さみしさの周波数」あたりのライトノベルがきっかけだったと記憶しています。それまでも、ハリーポッターバーティミアスなんかも読んできました。

「文学!」というより、ポップで楽しめるエンタメ作品が好きです。小説書きたい、ということをぼんやりと考えてはいましたが文章の書き方がよくわからず、とにかくいろいろ手を出そうと作者やジャンルもあまり偏りなく、わりに幅広めに読んできたつもりです(見直すと結構趣味が出てる)。

高校三年生くらいからは、「こころ」とか「人間失格」とか文学っぽいものに入り、大学生になってからは「ティファニーで朝食を」とか「グレート・ギャツビー」だとかの海外文学に手を出し、大学三年生からは、理化学書心理学書、経済医療、後は卒業研究に関わる学術論文、ビジネス書が入るようになりました。

読むことと物語を楽しむきっかけになったのは、お硬い文学よりも楽しいエンタメ小説でした。そういうわけで、私の振り返り、それと私の人柄を読み取ってもらう材料として、読んで面白かった小説を一挙紹介しようと思います。

 

次の一冊にぜひ。教養というより楽しみのためのポップな小説が中心です。

 

 

1「GOTH 僕の章 夜の章」乙一

薄い文庫本なのになぜか上下巻セットになっている本作。

売り方には文句ありますが内容は素晴らしい。中学時代の私はこの本を読んで乙一の虜になりました。

魅力的で特異な「僕」と「夜」というキャラクターを軸にしたライトミステリです。

ライト、というのは内容というよりも単純に話が短いということで、内容はそこらの長いだけのミステリの二百倍は充実しています。長編ミステリの一本より遥かに破壊力のある短編が収められた短編集。ミステリ小説大賞も取っています。

 

2「失踪Holiday」 乙一

乙一ひいきが続きますがご容赦を。

「GOTH」は人が痛い目にあったり死んだりする怖い話ですが、この話は別。優しさと美しさ、そして構成の妙が冴え渡る、これもまた短編集です。

表題作はもちろんですが、同録の「しあわせは子猫のかたち」は大物ミステリ作家がひと目もはばからず泣いたという悪れた傑作です。 

 

3「失はれる物語」 乙一

こちらも「失踪Holiday」と同系列の優しいほうの短編集。

こっちのほうがたくさん短編が入っているのでおすすめ。私のお気に入りは「手を握る泥棒の物語」です。この頃の乙一は最高に冴え渡っています。 

 

4「吉祥寺の朝比奈くん」  永田永一

大学生協で手に取り、「なんかこの人。乙一っぽいな。しかも滅茶苦茶面白いし」と思って迷わず購入した本。実は乙一本人で、永田永一という変名を使っていたことをこの本で初めて知りました。いい作家だし、滅茶苦茶面白い話を書く人なんですけど、なんかこういうとこどうなん。まあそれでも好きなんですけど。小説界のトガシなのかもしれません。

 

5「太陽の塔」 森見 登美彦

高校生のときに爆笑しながら読んだ本。ここまで笑えるファンタジー小説はなかなかないと思います。「夜は短し」がとても有名になりましたが、森見登美彦の原点はここなると思います。私はとしては、夜は短しよりこっちが好きです。

ファンタジーノベル大賞受賞作、森見登美彦のデビュー作です。 

 

 

6「夜は短し歩けよ乙女」森見 登美彦

言わずとしれた有名小説。映画にもなりました。森見登美彦出世作。どこかとぼけた登場人物が愛おしい。あまりに有名なのであえて解説はしません。 

 

7「君の話」三秋 縋

インターネットで「げんふうけい」名で創作SSを上げていた著者ですが、この話で山本周五郎賞の候補になりました。着実にキャリアを積んでいる作家で、今すごく注目してます。

ちょっと中二病風味、かわいそうな男と女が悲劇を乗り越える(乗り越えられない)という感じの話。かわいい女の子とこじらせた男の組み合わせが大好物の私としてはおすすめするに外せない小説です。

 

8「二十世紀電気目録」 結城 弘

珍しい「京都アニメーション小説大賞」から出た作品。ポップなイラストもそうですが、アニメを意識したキャラクター作りは魅力的で、ずっと読んでこの世界に浸っていたいと思わせてくれる作品です。内容をざっくり言いますと、「神を信じる素直な少女」と「エジソンを信奉する科学少年」の恋愛、逃避行もの。少年少女の対立、大人と子供の対立、本音と建前の対立……ドラマ展開も練りに練られていて飽きさせません。これは自慢ですが、監督と著者のサインをもらいました。

京都アニメーションは素晴らしい会社です。全世界のファンが復活を待っていますし、私もそうです。

 

9「ティファニーで朝食をカポーティ

大学生の頃、英語の勉強をしようと手に取ったもの原文テキストが全然読めず、日本語版を読んだらドハマリした本作。話としましては「死ぬほど魅力的な女優崩れのヒロイン」にみんなメロメロになる話です。「ロリータ」とか「痴人の愛」あたりと同じですが、こっちはもっとスタイリッシュな感じがします。

テーマとしても深く、「ティファニーのように安心できる場所」を求めていつまでもたどり着けないホリーは、現代の青い鳥症候群を象徴しているように私には見えました。きらびやかながら悲しい話です。 

 

10「ライ麦畑で捕まえて」 サリンジャー

「天気の子」では村上春樹訳がこっそりと場面に写ってましたね。世の中に持っていた思秋期の少年のとげとげした感じが心に迫ります。学生の頃に読んで共感し、おとなになって読んで懐かしく、愚かな主人公を愛しく思う。世代を超えて読み継がれる名作だと思います。 

 

11「夜のピクニック」 恩田 陸

「目的地を目指してただ歩く」だけの小説。小説の中で主人公が言及していますが「なぜ歩くだけのことだこんなにも特別なんだろう?」読み終えた読者は誰もがそんな感慨を抱くはず。

蜜蜂と遠雷」で一大ムーブメントを起こした著者ですが、もう十年以上前にもこんな素晴らしい作品を発表しています。青春群像とミステリ。一回も本編に姿をあわらさないくせに、一番物語に絡んでくる杏奈のことが私は一番気に入っています。

「ただ歩くだけ?」いやいや、そこには色んな人の思いとか願いとかがだね……とか無粋なことはいいません。読みましょう。 

 

12「涼宮ハルヒの消失」 谷川 流

 中学生のころ、弟の部屋になぜかあったのを手にとってガチハマりした最初のライトノベル。時間遡行ものでびっくりしたのはこの本が初めてです。シリーズものの第四巻。

長門さんとか朝比奈さんとか小泉くんとか涼宮さんとか、魅力的なキャラクターが部活でバタバタするコメディの元祖といったところ。大人になって楽しむのはちょっとむずかしいかも……

一番はやはり四巻の「涼宮ハルヒの消失」。この一冊は単独で映画にもなりました。七夕、ジョン・スミス、SOS団……過去改変のループってどうなってるんですかね? みたいなこともありますけれど、私にとっては伝説の一冊です。 

 

13「遠回りする雛」 米澤 穂信

皆様御存知、「古典部」シリーズ。その第四巻にあたる連作短編集です。古典部シリーズは どのキャラクターも好きで愛着を持って読んでいますが、私の独断と偏見により、ミステリーは長編でなく短編集のほうが評価が高くなります。ポー方式です。

中でも「心当たりのあるもは」は短くキレあり、過去作品へのリスペクトもある良作。きっとお気に入りの一編が見つかる短編集です。 

 

14「猫の地球儀」 秋山 瑞人

 ライトノベル会で最も高い文章力を持つと言われる秋山瑞人SF小説。「イリヤの空、UFOの夏」が有名ですが、私はこちらのほうが好みです。

ライトノベルとは思えない重厚な設定と、少年の熱い心に訴えかける迫力ある戦闘シーンが魅力。子どもから大人まで幅広く読み継がれる名作。一度、なかなか書店で見かけることがなかった時期があったようですが、今では電子版が復刻しており手に入り安くなっています。

高校生のころに紹介されて、初めて手に取ったは社会人になって三年目くらいでした。

表紙の女の子(クリスマス)の正体には、美少女ラノベを期待した読者は度肝を抜かれると思います。

 

 

15「1984年」オーウェル

言わずと知れたSFの名作。二十世紀最高の百冊にも選ばれた作品です。

管理社会、思想統制的な政権が出てくると必ず引き合いに出され「1984年の世界だ!」と言われる本でもあり、読んでみるとその意味が理解できます。

徹底的に思想を統制され、眠っている間にも反政府思想をモニター越しに監視され、異分子は誰にも知られることなく速やかに排除される世界。かの有名なビクトール・フランクルは、「人間の心の自由だけは誰にも奪うことが出来ない」と言いました。私もずっとそう思っているのですが、その心の自由さえ奪われた人間が最後にどうなってしまうのか。

そこらのホラー小説の100倍は怖いSF小説。教養としても娯楽としても読める凄い一冊です。 

 

16「パーフェクトフレンド」 野崎まど

鬼才、野崎まどの「2」シリーズの一冊。「アムリタ」「パーフェクトフレンド」「舞面真のお面の少女」「死なない生徒殺人事件」とありますが、私の一番のおすすめはこれ「パーフェクトフレンド」です。

話の内容は「天才が故に授業に来る意味がないと言って学校に来ないクラスメートを学校にこさせるようにする話」にです。ジャンルとしてはミステリーになるんでしょうが……分類が難しい。

疾走感のある軽い文体と、アニメチックで可愛らしいキャラクターたちが繰り広げるミステリー、青春、SF、ファンタジーごった煮のストーリー展開に引き込まれ、気がついているうちには読み終わっている楽しい小説です。

気負わず読めて夢中になれる、そこまで分厚くない楽しいエンタメ小説です。野崎まどは鬼才だ……! と思って私がファンになったきっかけの一冊です。 

 

17「狼王ロボ」 シートン

ラノベ中心から児童文学に一気に気色が変わりますが。

子どものころには一度読んだかもしれない「シートン動物記」。シートンの動物観察記録を継ぎ接ぎし、フィクションとして仕立てあげた動物文学の名著です。

短編集になっていますが、まだ読んだことのない人には絶対に読んでほしいのが「狼王ロボ」。古い時代のアメリカ、家畜を殺して回る大きくて老獪な狼「ロボ」とその駆除を依頼されたシートンの戦いを描いたノンフィクション寄りのフィクションです。

シートンは様々な策を巡らせて狼を捉えようとしますが、狼は地面に埋めた罠を避け、毒入りの餌には尿をかけてシートンを挑発し、工作には全くひっかかりません。そこでシートンの取った行動は、かのロボが大切にしている配偶者を先に罠にかけて動揺を誘うという作戦で……

この話の面白さは、私達が思っているよりも動物はずっと賢く、感情豊かな生き物だということです。敵対していたはずの人間と狼が、ちょっとずつお互いのことを理解していくように見えるのが奇妙な読後感を残します。

私はこの話を読んで狼がとても好きになりました。社会人になってから読んだ比較的対象年齢浅めと思われる本たちの一冊。ですがこの奥深さよ……

 

18「ハリーポッターとアズカバンの囚人」 ローリング

誰もが知っている、説明不要の超大作。それなのにここに載せたのは、絶対に読んで後悔しない最高の小説に間違いないからです。

全7巻ありありますが、私が一番好きなのはこの一冊。時間の巻き戻しに、誰から送られたのかわからない最高級の魔法の箒、長生きするネズミの謎、アズカバンから脱走しハリーの命を狙うとされる囚人の正体とは……?

スリリングな展開に、全巻からの伏線回収、ハリーの生い立ちが更にちょっとだけわかり、クリスマスチックな幸福なサプライズもある盛りだくさんの一冊。私はこの一冊だけ読んでも後悔しないと思っています。 

 

19「スタンド・バイ・ミー」 キング

名作映画として何度も取り上げられる「スタンド・バイ・ミー」の原作。現スタンド・バイ・ミーを名乗る楽曲やフィクションが数多制作され発表される昨今ですが、 その源流にいるのがこの一冊です。

内容は「少年たちが電車に引かれた少年の死体を探して有名になろうとする」、少年たちの冒険譚です。

長い道のりを語らいだながら歩く(「夜のピクニック」もそうですね)うちに、お互いの絆を深め、ゴールにたどり着いたときには、出発する前とは全く違った自分になっている。私がいつか書きたい「皆で歩く」系小説の元祖。高校生の時には少年たちの冒険に心を踊らせ、大学生になってから人生の重みに思いを馳せ、社会人になってからはこれからの未来と過去を俯瞰して深い感銘を受ける。誰もが、いくつになっても、何度でも読み返して違った感動を得られる名作です。死ぬまで持っておく「殿堂入りの一冊」の候補にぜひ。 

  

20「ゴールデンボーイ」 キング

スタンド・バイ・ミー」と同じ「恐怖の四季」シリーズの二冊め。「ゴールデンボーイ」と「刑務所のリタ・ヘイワーズ」を収録。ホラーの大作家と言われるキングですが、ホラーより一般小説のほうが面白いと言われてしまう理由はきっとこの本にあります。

「刑務所のリタ・ヘイワーズ」は、冤罪の男が刑務所の中で希望を失わずに自分の意思を実行にいつしていく感動の話です。これは、あの有名な映画「ショーシャンクの空に」の原作です。

「希望はいいものだ」というメッセージが物語を締めるためのご都合主義的な主張に終わらない小説はこの一冊だけです。 

 

21「グリーンマイル」キング

高校一年生のころ、ちょっとイケてるクラスメートが「これめっちゃ感動する」と渡してくれた本。めっちゃ感動しました。

傷を治す事のできる不思議な力を持つ大男コーフィ。無口だが優しい男が、なぜ双子の子どもを殺した罪で刑務所に服役することになったのか?

怖いけれど優しい、不思議な力に満ちた小説です。悪いヤツばかりでてくるのに、死刑囚コーフィだけがあまりにも聖人に見えすぎて辛いという小説。乙一の「KIDS」とかはこのあたりの影響を受けてそうと勝手に考えている。

金ローでもやってるそうですね(実は見たことがない)。

 

 

22「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」 桜庭一樹

痛切な痛みと必死さに満ちた少女小説

奇妙な読み味と不思議な疾走感で最後まで読み手を飽きさせません。それに大変薄くてですね……読書初心者の私にはぴったりでした。

転校生の「海野藻屑」は、タレントを父に持つ美少女。一人称が「僕」で、自分は人魚なんだと自称するおかしな転校生と仲良くなってしまった主人公は、彼女の秘密を知っていき――

登場人物の誰もかれもが何かをこじらせており、青春時代のぐちゃぐちゃをそのまま文字に落とし込んだような奇妙なストーリーは他に類を見ません。 

 

23「荒野」 桜庭一樹

ビルドゥングスロマン」という用語の意味を私はこの小説で初めて知りました。一人の人間の成長をそのまま描いていく小説のことを言います。

主人公「荒野」の12歳から16歳までの成長を描いた少女の成長物語。個性的な家族、友人、そして恋愛。普遍的な人生のイベントを「荒野」という少女にたくして描いた作品です。

「砂糖菓子の――」は青春の一番劇的な瞬間を切り取った小説ですが、こちらはもっと長いスパンで見て「人生の一部」をざっくり切り取った小説。

私の個人的なあれですが、友人関係に悩み恋にためらう素直な荒野が大変いじらしく可愛いというのが私のおすすめポイントです。

 

24「君の膵臓をたべたい」 住野よる

アニメにも実写映画にも漫画にもなった超話題作。「君の膵臓を食べたい」

ここ数年の間で、百万部を超えた小説は多分この一冊だけではないでしょうか。しかも、権威ある賞でなくウェブ出身。文芸というのは、立場や権威を吹き飛ばすほどの力を秘めた分野だと痛感します。

内容。死にゆくヒロインについての話はとてもたくさんありますが、恋とも友情ともしれない、この二人の間に横たわる不思議な絆に引かれます。友情や恋愛といった枠組みから少しだけ離れたところで、新しい価値観も少しだけ提示していると感じます。

が、この小説の面白さは考察とかテーマでなく、キャラクターにあります。登場人物が好きになれ、読み終わるのが寂しい、そんな小説です。

皆魅力的ですけれど、ヒロインの桜良がとても変だけどとても可愛い。

ストーリーは多少ありきたりですが、作者のキャラクターへの愛と言いますか思い入れといいますか、そういうものがぎゅっと詰まっています。キャラクターと友達になって架空の世界を楽しむという意味で、最高のキャラクター小説だと私は思っています。 

  

25「カラフル」 森 絵都

「もう一度生き返ってやり直す権利を与えよう。ただし、赤の他人の体で自分の罪を思い出せたら」と、記憶を失ったまま現世に送り返された高校生の話。

生き返った先は知らない誰かの体。ろくでもない家族に悲惨な友人関係。果たして主人公は、天使の言う「ホームステイ」により生前の過ちを思い出し、生き返ることができるのか。

絶望的な現在をコミカルな筆致で描く作品です。

森絵都の作品は、軽い調子でさくさく読めるのに、大人の心にずしんとくる重厚なテーマを最後に突きつけてくるところが魅力です。本作は児童書という扱いですが、子供だけでなく、大人でも確実に楽しめる凄い作品に仕上がっています。

家族全員が読んで誰もが感動して感想を言い合えるような、幅広い世代に支持される作品です。

 

26「風に舞い上がるビニールシート」 森 絵都

森絵都直木賞受賞作。カラフルは高校生の話ですが、今作は大人の話。結婚と仕事の選択を迫られる有名パティシエの補助員、保護犬のボランテイアをする主婦、ベテラン会社員と若手社員の確執、海外支援部隊で夫を亡くした妻……様々な境遇の人々の心の葛藤を描いた美しい短篇集です。

私はミステリー短編を好んで読んできました。しかしこの作品には、あっと驚くような仕掛けはなく、人間関係や日常を描写を中心に物語が進んでいきます。

けれどそこには、身の覚えのある感情であったり、自分の知らない葛藤であったり、人々の心の動きが克明に描かれていて、気が付かないうちに物語に飲み込まれます。力のある小説です。

小説は「感情をハックする」道具だと私は思っています。その人の感動をハックする力が滅茶苦茶高い小説です。

  

27「アルジャーノンに花束を」 ダニエル キイス

このブログでも何回も書いてる……チャーリイがホスピス自閉症患者と対面するシーンとか、最後のパン屋のシーンとかで泣きそうになった小説。泣けます。そしてSFの傑作とも名高い本です。

知能障害患者の手記という形で始まる作品なので、最初はかなり面食らうと思いますが、知能手術を受けてちょっとずつ文章が整い、日記がどんどん高度担っていく様は読んでいて楽しいです。そして、手術には欠陥があってチャーリイの頭脳もいつかは……

記憶や人格を失う小説は常に悲しいですが、この本を超える悲しい小説は未だにないと思います。それにしても、読者は悲しいのに主人公は幸福になっている小説ってこの本くらいじゃないかなと思っています。

 

 

28「我らが隣人の犯罪」 宮部みゆき

長編ミステリーの印象が強い作者ですが、初期は歴史もの・ミステリー含め短編が多めです。私は、最近のよりも初期のほうが好きだったりします。

宮部みゆきのデビュー作。 舞台となっている時代は少々古いですが、物語の展開とひねりを利かせた短編群は全て独特の驚きと読み味を持っています。大変切れのあるミステリ連作短編集です。凄く出来がいいのか、評判がいいのか、いつのまにか表紙が刷新されているようです。

 

終わりに

社会人になって四年目、小説を読む量が抜群に少なくなっている……上に紹介したものも、大学三年生くらいまでに読んだものが主です(四年生からは研究室生活ですでに余裕を失っていました……)。

最近はゆとりも出てきまして、過去の本を思い出しつつ、新しく読んだ小説も追加していこうかなあと思っています。でも最近も心理学書とか古典文学とか、高尚ぶってるような本ばっかり読んでる……

ともかく、どれか一つでも気に入っていただける本がありますと、選者としましては大変光栄の至りです。

ぜひ次に読む一冊にお役立てください。