「レプリカたちの夜」を読みました。
「レプリカたちの夜」を読みました。(ネタバレをします)
読んだきっかけ
駐車場に車を駐めていました。いざ料金を払おうと思ったときに財布に一万円しかなく、はっと顔を上げると道路の向こうに本屋が……という経緯で買った本です。両替のためです。
と、いうのもありますが、この作品は新潮ミステリ大賞受賞作です。
私も小説新人賞を取りたいと思っています。文学賞を受賞する作品は定期的に読んで、こんな感じかと感覚を掴んでおきたいというのも理由の一つです。
人間は優秀なベイズ分類器なので、十分な学習を積めば文学賞受賞クラスに分類される文章を生成できるはずだと思っています
こんな話
青春、ミステリ、ホラー、三幕構成……などなど、既存の物語のフレームではくくることができない不思議な話です。おそらく、こういうちょっと簡単には説明できない挑戦的な作品が賞を取るのかなあ、と思ったりしました。
普通にたくさん小説を読んで類型に飽きている人には新鮮さがあって楽しめるかもしれません。ただ、純粋に読みやすくて感情を揺さぶられるような物語を望む人にはちょっと物足りないと感じます。学生のころの自分だったら、あまり好きではなかったかも。
舞台と登場人物
レプリカ工場の品質管理部門に務める男が主人公で、その同僚や工場長、事務員などなど、工場の従業員がわらわら出てきます。メーカーの技術界隈の人は、この空気感にちょっと馴染みがあって楽しいと思います。私は楽しかったです、
書き手としての学び
何かの記事で読んだのですが、小説の新人賞は作者の可能性に与えられるものだそうです。やっぱりこの作品も、どこか語りは伊坂幸太郎ちっくだけどちょっと挑戦的な落とし方をする話でした。
新人賞を取りたければテンプレや技術の組み合わせによる面白さでなく、作り手としての工夫や挑戦自体を評価されるのかも、と思いました。
新人賞に応募する時には「これは突飛すぎかな」という迷いは不要なんだろう、ということを学んだ小説でした。
「ニューロマンサー」を読みました。
「ニューロマンサー」を読みました(ネタバレします)。
きっかけ
英語の先生とSFの話をして「ニューロマンサー」と「動物農場」がおすすめだ!
と言われたためです。特にニューロマンサーはコンピュータギークのバイブルのような話で日本を舞台にしていてとても興味深い、とのことです。早口の英語はやけに説得力があって、授業の終わりに買って帰りました。
感想
ドライブ感のある文体とぐいぐい話が進んでいく感覚を味わいました。普段文学っぽいものばかり読んでいる私には新鮮でした。
「マルドゥック・スクランブル」を思い出します。サイバーパンク小説はこういうスタイルで書くんですね。
どこか投げやりな会話、未来の機械が説明もなしに出てきてがんがん活躍して、読んでいる人は「???」となりながらなんとか筋を追っていく、という感じ。
私も「読んだ」といいつつ最後の四分の一あたりはななめ読みというレベルでないひどい飛ばし読みをしていました。
想像力の限りを尽くして架空の世界を作り上げる小説で、創作意欲が刺激されるような気が若干します。
千葉が話の中心になっていますが、千葉よりも名古屋のほうがSFの題材としてはいい感じかも、と思ったりしていました。ちょっと野暮ったくて雑なところとか、メカメカしい会社がいっぱいあるところとか。
まだ消化不良な部分もあるので、機を見てまた読み返したいです。まずは、ウィキペディアで新出単語の意味を確認するところからスタートです。
「走れメロス」と「人間失格」を感情分析しました。
何か小説を書くヒントになればと思って、Google Colaboratoryを使って感情分析をしてみました。
単語をpositiveとnegativeとneutoralに分類し、文中に現れたpositiveとnegativeがそれぞれ、全単語中に何割あったか示すものです。
走れメロス
横軸がストーリーの進行度合い、縦軸が正/負単語の割合です。
最初はネガティブ優勢ですが、ちょっとずつポジティブに転換していって大団円を迎える様子がわかります。確かに、読んだ感覚と一致していると感じます。
人間失格
「人間失格」についてもやってみました。こちらは全体的に感情はフラットですが、終盤にかけて負の感情が吹き上がるような構成になっています。
全体の60%を超えたところからネガティブが優勢になってきます。
妻との結婚が幸福が最高潮になり、その後の悲劇からやがて薬物におぼれていくシーンが負の感情を引っ張っているようです。
参考
コードはこちらの記事を参考にしました。
今後やること
「面白い小説」と「そうでない小説」を分けるものが何かを見出したいと思っています。「走れメロス」も「人間失格」もとても面白い小説だと思うので、比較対象として紛れもなく面白くない小説を準備する必要があるのですが……そういう小説はそもそも出版されない気も……
例えば小さな公募の一次選考、二次選考、三次選考、四次選考……などの作品をそれぞれ分析していけば、最後まで残る作品の傾向みたいなところをつかめるかもしれません。
何か面白いアイデアがないか検討中です。
「ティファニーで朝食を」を英語で聴きました。
「ティファニーで朝食を」を聴きました。(※ネタバレをします)
読んだきっかけ
大学生のころ、英語学習をしながら小説を読みたいと思って手を付けた本です。どちらかと言うと勉強の比重が大きかったのですが、以来お気に入りの一冊になりました。
当時の私は男女絡みの浮ついたことが嫌いでしたが、いろいろあって自身の価値観の変遷を迫られており、そのタイミングで浮ついた出来事の権化みたいなヒロインが出てくる本作を読んで衝撃を受けました。
そういうわけでは、私の中ではちょっとしたレジェンド的な作品です。ちなみに始めて読んだ日本語版は村上春樹訳です。村上春樹の翻訳は本当に読みやすくて好きです……! 本人の著作はよくわかんなくて途中で投げちゃうんですけど。(ねじまき島とか1Q84とか)
で、映画の方はイメージと違ってあまり好きでなかったりします。
聴いたきっかけ
Audibleの無料キャンペーンの広告が流れてきたので、アマゾンユーザーとしてまんまと釣られました(本記事はオーディブルの悪質な宣伝です)。2019年の5月ごろだったと思います。社会人になってから英語を勉強する必要が出てきて、英会話教室に向かう車の中で聴けば英語力が爆上がりしそうと思って聴きました。アイデアは良かったですが、あまり上達してる感じはしません……「耳から流すだけ!」という学習方法はあまり有効ではなかったみたいです。
感想など
でもやっぱり良い本です……(英語学習にはあんまりなってないですけれど)。
「ここではないどこか」をずっと探し続けるホリーは、理想の相手を求めて結婚相手を探し回ったり、理想の仕事を求めて回ったりする「青い鳥症候群」の人そのものです。
あまりに病的な性向の持ち主ですが、その魅力的ゆえに彼女はいろいろな人から優遇され甘やかされています。麻薬犯罪に巻き込まれてなお、助けてくれる人がたくさんいる彼女は、周りを振り回して平然としている悪い女の人そのものです。
けれど、彼女に好意や魅力を覚えている主人公の視点から眺めると、そんなろくでもないやつなのにどうしても魅力的に見えてしまうのが不思議です。
最終的にアメリカからブラジルへ、そして行方知れずになったホリーはきっと永遠に幸福になれない感じがします。彼女の神秘性を損なわないように、物語として開かれた終わり方をするしかないよなあ、と思っていました。
そういう危うさの上に立った不思議な魅力を持つ作品です。
「睡眠文学大賞」に応募しました。
「睡眠文学大賞」に応募しました。
きっかけ
Twitterで「八重@最近は公募の人」さんが展開してくださった公募を見かけたのがきっかけです。(人の名前を引用する時ってどうするのが正解なんでしょうか……?)
野生時代に送る原稿が全然進んでいなかったので、息抜きにどうかなと書いてみました。規定枚数は4000〜8000文字です。なんとなくこんな話はどうかな、というのが頭にあって、最低10枚くらい掌編にはまとまりそうな感じもあったのでやってみました。少々苦戦しましたが、GW中に書いて提出しました。
こんな話にする
「眠りに誘うような話」ということなので、一人称視点で語り部を眠らせてしまう話にしようと考えました。
ただ眠ってしまうだけでは話の起伏に欠けるので、主人公は眠りたくない、眠気と戦わないといけないシチュエーションに置くのが良さそうです。そういうわけで、主人公は、サンタクロースの非存在に気がついてしまった小学生の男の子にしました。
サンタクロースを待って起きていようと思うけれど、つい眠ってしまい意識を失うところでエンディング、という話になりました。
クリスマスの夜の話を書いてみたいと思っていて、ちょうど公募の趣旨とも合致するようにまとめることができたと感じています。読み返してみて、私は結構眠くなる感じがしましたが、他の人はどうでしょうか?
思ったこと
書いたものを公開せずに反省を書くのもあれですが……
私の文章は地の文が多くて登場人物が少ないです。主人公に昨日の会話を思い出してもらう体で友達に発話させてみたりしましたが、果たしてうまく行っているでしょうか?
結果発表は6月1日です。
AtCoder Beginner Contest168に参加しました。
AtCoder記事を全然書けていませんでした。
が、競技自体は今のところ無欠席です。時々冷えつつも順調にレートは上がっています。
今回の結果
強い人は20回くらいで水色・青色に行っているのがちょっと悔しいですね……
復習
A問題
if文が多くてタイプミスが不安でしたが一発でACです。
B問題
実はちょっと手こずりました。文字列への追加でs.at(i)……を使ってしまってエラーを吐き、???となっていました。push_backを使いましょう。しかもタイプミスでWAするという……
C問題
「余弦定理」を使いました。doubleの桁数が不安でしたが、えいやっと提出したら通ってしまった感じ。後から調べてみると10の300乗まで表現できるそうなので、問題文の精度条件に対しては十分余裕がありますね。
D問題
BFSできない……! でも「これはBFSっぽい」という感覚は得るに至りました。
snukeさんのコードを写経しました。書いてあることはなんとなくわかるぞ、という感じです。研鑽を積みましょう。
E問題
A/Bで管理すればうまく数えられるかな……? という微かなひらめきはありましたが実装できませんでした。
今後やること
このまま続けて参加していけば、茶色コーダーにはなれそうです。
数ヶ月前からずっと言っていますが、そろそろ典型的なアルゴリズムを抑えていきたい。BFS・DFS・数え上げ、あたりの過去類題を解けるようにしたいと思います。
この手の問題を時間内に安定的に解いて、緑パフォを目指します。
「星を継ぐもの」を読みました。
「星を継ぐもの」を読みました。(※ネタバレをします)
この本を手にとった理由はタイトルがかっこ良かったからです……!
が、面白さのあまり最後まで一気読みでした。私の中で、2020年5月度の買ってよかった小説1位に躍り出ました。
「月で見つかった死体」というキャッチーな出来事に対して、「この人物が死んだのは五万年前」「当時の人間は宇宙船を持っていない」ことや、じゃあ彼は宇宙人なのか、という推定に対して「その生物学的特徴は全く地球人と同じ」など、不可解な状況がどんどん積み上がっていき、ミステリーを読んでいるみたいに興味と好奇心を引き付けられます。
そういった謎に対して、科学技術を駆使して少しずつ迫っていく中盤の展開は、科学に興味のある私にはとても魅力的でした。
死体と一緒に見つかった「日記帳」を解読したり、死体の分析から体の組成、住んでいた場所の特徴を特定したり、ちょっとずつ事実を積み上げていきながら、「なぜ死体がそこにあったのか?」にまつわるストーリーを解明していきます。
「月のクレーターから見つかった物質は核反応によって生成するもの」という事実から「月で核戦争が起こった」ことが明らかになるシーンがちょうど本の半分あたりから来て、ここから一気に物語が加速していく感じがしました。
著者はコンピューターのセールスマンだったそうですが、これが処女作ということでとても驚きです。私も科学技術には関心のあるほうですが、ここまでリアル感を持って(本当に科学考証が正しいのか私は判断できないのですが……)書けるのがとてもうやましいと感じます。
古い小説だと思って読んでいましたが、全然古さを感じません。それどころか現代よりもずっと新しい物語のように思えます。
この本を読んでSF小説への関心がものすごく高まりました。
ちょっと毛色が違いますが、英語の先生におすすめされたこともあって「ニューロマンサー」を読んでみようと思います。
こういう面白い小説を読むと、創作意欲がとても刺激されます。もっと面白い小説を読みたいです……!
「猫の地球儀」を読み返したい気持ちになりました。