「小説の書き方」「プロットの作り方」に悩むすべての人へ! エドガー・アラン・ポー「詩と詩論」の「構成の原理」が目から鱗すぎたのでありとあらゆる人に紹介したい
面白い物語はなぜ面白いのか?
読む人・観る人・書く人みんなが死ぬまで抱え続ける問題です。
それがわかれば、最小の労力で最高の作品ができ、みんなハッピーに……そのためには、個々人がそのノウハウを会得し、そして共有していく必要がある!というのが私のひそかな主張です。
今回紹介する本は、私の主張を裏付けてくれ、そして創作に携わる人すべての目から鱗が大量に流れ落ちるであろう一冊です。
- 作者: エドガー・アラン・ポオ,福永武彦
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1979/11/23
- メディア: 文庫
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1.エドガー・アラン・ポーという史上最強の作家について
エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe、1809年1月19日 - 1849年10月7日)は、アメリカ合衆国の小説家、詩人、評論家。(wikipedia抜粋)
コナン・ドイル、江戸川乱歩は超有名ミステリー作家ですが、彼らの作品はポーなくして生まれませんでした。巷にあふれる探偵物語の源流はすべてこの人です。
ジャンルに捕らわれないマルチクリエイター
「黒猫」「黄金虫」「大鴉」……著名な作品を数多く世に送り出し、SF、ホラー、恋愛と、ありとあらゆるジャンルを横断して活躍した作家です。
つまり凄い人です。
2.ポーの主張
この本の「構成の原理(本文p.220~)」という章で、ポーはこう述べています。
どんな作家でもいい、自分の作品のうちどれか一つが完成するまでの過程を逐一詳述する気になれば(というのは、それができれば)、大変興味深い雑誌論文が書かれるはずである。 (ポオ 詩と詩論 p.221)
雑誌論文とは「まだ学術的にまとまっていない新しい発見を報告する」ものです。つまりポーは、「小説・詩の書き方は、まだあまり研究されていない分野だ」ということを言っているのです。
続けて、ポーはさらに考えます。
そうした論述がなぜ公刊されないのか。ぼくにはなんとも言えないが、恐らくは作家の虚栄心が他のどんな理由にもましてそのことと関係しているのであろう。大抵の作家、殊に詩人は、自分が一種の美しい狂気というか、忘我的直観で創作したと思われたがるものだ……(中略)
九十九パーセントは文学的俳優の小道具であるものを、読者に覗き見されることに怖気をふるうものである。(p.222)
1846年の文章ですが、それから150年以上経った今も通用する鋭い洞察です。
さて、そんなブーメランをぶん投げたポーは、自作「大鴉」は直感でないと述べたのちに、こう宣言します。
すなわちこの作品(=大鴉)が一歩一歩進行し、数学の問題のような正確さと厳密な結果をもって完成されたものであることを明らかにしたいと思う。(p.222)
なんと! ポーは、自らのノウハウをすべて公開するというのです!
つまりこれは、 「ポーの創作過程を詳述した学術論文」であり
映画脚本、小説、漫画、ライトノベル……そのすべての骨格となる「構成」について、世界中の誰もが認める天才作家が教えてくれる。
そんな本です。
3.「大鴉」を書く前に、ポーが準備したこと
長さの選択
ポーは「効果の統一」「印象の統一」が重要であり、長くなるとそれが損なわれると主張します。そして「ロビンソン・クルーソ-(長編小説です)」を例に出し、「統一的効果を必要としない作品」では一気に読み切れる長さの限度を超えることは有利かもしれないが、詩作ではそうではない、と述べます。
ポーは短い作品を好んで描く作家ですが、長編小説がメインの時代にはちょっと適応の難しい主張です。ですが、長編というのも短いシーンの連続であり、長編を書こうとする人も、
「読者が一気に読める長さ」を常に意識し、その中でどういう印象を与えたいか? を決めておくといい
のでしょう。そういえば、小説家になろうでも
「一章は二千文字から三千文字!」
という説が流布されていますね。
長編小説が総体として読者に与える影響については述べられていませんが、「次の章どうしよう?」という迷った時には、役に立つ考え方と思います。
効果の選択
ポーは、自作を読んだ読者が何に感動したかを分析し、ざっくり四つに分類します。
「真理」「知性の満足」「心情の興奮」「美」
「長さの選択」であったように、読んだ人に与えたい印象を、自分の中で明確にせよとポーは言います。
この四つが何を指しているのか本文中ではつかめませんが、私見を交え、現代小説に当てはめるとこういうことだと私は考えます。
「真理」……読者の価値観を揺さぶるメッセージを与えて印象付ける
「知性の満足」……珍しい仕事を題材にしたり、謎を解決することで印象付ける
「心情の幸福」…悲しみ、恐怖、幸福等の感情を与えて印象付ける
「美」……文章を読んだリズム感、美しい風景描写で印象付ける
つまるところ「読者にどういう気持ちになってほしいか? どういう印象を受けてほしいか」を、書く前に明確にするのですね。
ポー自身は、「美」が最も重要であとは補助だと考え、そして「美」を伝えるための最適な長さは100行、とします。
実際の大鴉は108行。その通りになっている。ポーは、書き始める前に、こういった大枠を立て、自分の伝えたいものを明確にしているのですね。この考え方は凄く良くて、
何を書けばいいかわからない人の救いになる
と思います。「読者にこういう感情を抱いてほしい」という大枠を決めておけば、「類似作品や自分の身の周りから拾ってくる取材・題材に<あたり>が付けられる」と私は思いますし、ポーもそれに近いことをしています。
エピソードや人物が先にあるのではなく、読者に与える印象を考えてから、それに見合ったエピソードや人物を選ぶということ。書くことが思いつかない時の、一種の指針になるのではないでしょうか。
4.ここから実作……と行きたいが
ここから、詳細な文章や、登場人物の性別、性格、境遇……など具体的な詳細検討に入っていきます。
ここからは、「大鴉」を読んでいることが前提となり、また細かい検討が増えていき、このブログではなかなか詳述することが難しいです……
ただし、2.~3.を決めておき、自分の伝えたい何かを明確にしたおかげで、エピソードや人物の選定が容易になる、ということが凄く伝わってくると私は感じました。
詳細が気になる方はぜひ書籍を、と、ダイレクトマーケティングをお許しください。
終わりです。
PS
ちなみに、「効果の統一」ができている(はず)の話がこのブログ内にもあります。
乙一とか宮部みゆきの短編なんかも参考になるんじゃないかな、私の好きな本は短編が多いです。
youmizuno.hatenablog.com
後こいつも、映画のわりに短くて、「効果の統一」の一例になると思った。