狐の嫁入り

小説創作ブログ! のつもりでしたが、なんかだいぶ違う気がします……

2020年に読んで面白かった本ベスト10

googleのお医者さんの記事に影響されて、やけに勉強熱心になった2020年でした。それツイッターで見かけた「30歳以降の1年は秒で過ぎる」という言説に恐れを覚えて、ひとつひとつの体験を大切にしよう、みたいなことをぼんやりと考えました。ネット情報に影響されすぎですね……

ともかく、何かしてみようと考えまして、ひとまず、日記と読んだ本の記録を始めることにしました。昨年の11月頃から初め、1年くらい過ぎて今に至ります。

たった1年のことですが、過去の自分をあとになって振り返るのは、なかなか面白い経験です。

 

と、ここからが本題ですが、せっかく日記をつけたので、年末の振り返りをしてみたいと思っています。テーマは

 

「今年読んで面白かった本ベスト10」

 

です。

 

ただし、「私が2020年に読んだ本」であって、2020年に出版されたものとは限りません。

ジャンルはばらばらなので、小説だったり科学読み物だったり、教科書だったりします。

上のものほど人におすすめしたいもの。下に行くほど私の趣味、という並びになっています。

 

 

1 三体

 

今年一番心に残った本、と言われたら、迷いなくこのシリーズ「三体」を選びます。原子より小さな微粒子から始まる第一作、そして宇宙の終焉で幕を閉じる第三作まで、読み進めるたびに加速度的に面白くなっていく凄いSF小説です。

全三巻「三体」「暗黒森林」「死神永生」とありますが、日本語訳はまだ二巻までしか翻訳されていません。私は待ちきれずに三巻の英訳を買ってしまいましたが、日本語訳の発売が今から楽しみです。

私が読んだ小説の中で、時間的にも空間的にも最大級の規模を扱った小説です。中国の想像力恐るべし、と感じました。

ネットフリックスで映画にもなるそうです。

 

 

2 流星と流星群

SF小説を書こうと思いたち、資料として流星のメカニズムを知りたいと思って購入した本です。が、想像していたよりもずっと夢中で読んでいました。

こんなに素敵で物語性に飛んだ本だったとは……と、硬派な表紙からは想像できない内容でした。

長年天体観測に続けてきた著者による流星の解説本です。

著者の観測体験、流星の謎に迫る歴史敬意、流星についてどこまで明らかになっているか、といった好奇心を満たす項目が丁寧にまとめられています。

有名な流星群について、その発生日時や発見の来歴も書かれており、この本を読んだあとは星空を見上げるのが楽しくなりそうです。

科学的な内容もそうですが、天体観測に向かう人々と、そのわくわくした様子を描写する著者の視線には、とても良い小説のような読み味を感じました。勉強のつもりで買った本でしたが、ここまで夢中になれたのはとても運が良かったです。

 

 

3 巴里マカロンの謎

 

米澤穂信ファンなので。シリーズのものの中では古典部シリーズが気に入っていましたが、この一冊のおかげで小市民シリーズにも関心が湧きました。今回は短編集です。私のお気に入りは、「伯林揚げパンの謎」で、みんなで辛い揚げパンを食べるシーンがとても印象に残っています。謎解きについては言うまでもなく、期待を裏切らない冴えた展開とオチを用意してくれています。

 

 

4 星を継ぐもの

 

三体が面白かったので、その影響でSFを読み始めました。月で発見された宇宙服の正体を暴くミステリちっくな話ですが、著者の考える架空の宇宙世界に夢中になりました。

もしも人類が本当にこんなふうに誕生していたら、と思うとロマンを掻き立てられます。あまりにも衝撃的な結末だったので、その詳細をここに記すことはできませんが、とにかく凄いです(語彙力……)。

 

 

5 スキンケアの科学

肌のかゆみで悩んでいたので(突然話の調子が変わります……)、その対策のために皮膚について詳しくなろうと思い買った本。安易な対処方法やノウハウを述べるのでなく、皮膚科学の視点から、皮膚の構造と機能を解説してくれます。よくわからずにサプリや薬に手を出すよりも、こういった事実や実験結果を下敷きにした知識を持っていたほうが、より効果的に自分を守ることができそうだと感じています。

著者によると、皮膚の表面は退化した細胞が積層したごく薄い「角層」に覆われています。角層は水分を保持し自身のなめらかさを保持することで、細菌や異物の侵入から体を守り、かつ体からの水分蒸発を防ぐ機能を持っています。そのあたりの詳細を述べた上で、その機能を健全に保ち、健康な肌を保つためにどうすればいいのかアドバイスをしてくれます。

お肌の手入れに関心がある方(それと、皮膚お手入れアイテムの科学的効果に疑問のある方)には、読んで損のない本です。

 

 

 

6 僕の心のヤバいやつ

楽しいマンガです。地味な少年が美少女と仲良くなるお話、というある特定の属性の人々の願望を文字通り絵に書いたようなマンガという方もいるかもしれませんが、それは宣伝を悪く取っただけに過ぎません。

主人公の願望充足に走ることなく、少しずつ変化していく人物の心の動きを丁寧に書いているところがとてもいいと感じます。定期更新されていて無料で読めるので、気負うことなく楽しめます。来年2月には三巻が出るそうで、私はぜひとも買いたいと思っています。

話の内容は全く違うのですが、たまこラブストーリーも面白かったなあ……ということを読みながら思い返すマンガです。

 

 

7 ハガキ職人タカギ!

競プロ小説を書こうと思い、そのプロットの参考になりそうな小説を探していて見つけた小説。主人公は「ラジオの深夜コーナーの投稿に打ち込む少年」です。

そんなマニアックな題材を扱った小説ですが、ユーモラスな語り口、主人公の成長、そして友情、挑戦……と、思わず登場人物を応援したくなる不思議な魅力に満ちています。こういうのを読むと、どんな題材を取っても、書き手の力量次第で魅力的な話にできるんだということを改めて確認させられます。

某新人賞講座の先生が褒めていたので、新人賞講座の指導に沿ったお手本的な小説なのかも、ということがあるのが若干不満だったりします。(小説講座でデビューするような人は、講座に出なくてもきっと世に出ていっただろう教の信者なので)とはいえ、この小説の存在を知ったのは、その紹介を読んだからなのでなんとも言えない気持ちです。

 

  

8 涼宮ハルヒの直感

もう次作が出ることはないだろうと思っていた涼宮ハルヒシリーズがようやく出ました……

SFチックな要素は少なく、ミステリものです。メインストーリーには全く触れられていませんが「鶴屋さんの挑戦」は、文章謎解き&鶴屋さんの楽しいキャラのおかげでさくさく読めます。短い話とは言え、最後の最後で二転、三転と状況が急変する展開に驚きっぱなしでした。

次巻も期待せずに待っています。

 

 

9 文学少女対数学少女 

 

文学少女」といいつつ、ミステリ小説書き×数学天才少女のお話です。ちょうど私が数学をかじり始めたこともあって「連続体仮説」や「鳩の巣原理」などなど、数学のあれこれを絡めたミステリーが新鮮でした。

ミステリーとしては、王道というよりも、メタ的な楽しみ方をする部分が多い小説です。驚きは少ないかもですが、キャラ設定と題材があまりにもツボでした。

 

 

 

10 道具としてのフーリエ解析

最後にまた毛色が変わります。よく名前を聞くフーリエ解析ですが、普通の教科書は理論的な側面や式の導出、数学的厳密性に重きをおいていて、なかなか理解するのが難しいです。しかし、この本は厳密性でなく、イメージに訴えながら、最終的には高速フーリエ変換をどうやってやるかというところまで解説してくれます。

競プロのFFT問題のために買った本ですが、フーリエ級数フーリエ変換、離散フーリエ変換高速フーリエ変換……と、フーリエ解析にまつわる有名どころを浅く広くカバーしてくれているおかげで、今後役に立つことがありそうです。

肝心の競プロのコードは、読み解くことも難しくてなかなか手が出せていませんが……あのあたりの問題を解ける人は本当にすごいです。

 

 

最後に

SFと科学書を多く読んだ一年でした。三体と競プロ、それと仕事で流体周りの数学を勉強し始めたことが影響しています。

来年は何をしようか、今年のうちにぼんやり考えていきたいと思います。

 

ところで、ところどころ「SF小説を書こうと」「競プロ小説を書こうと」などといった記述がありますが、なんだかんだ言って書いていません。

すばるに応募できるようなのも仕上げたいですが(間に合うか……?)。読むのは楽しいですが、やっぱり書くのは大変です。それはそれで、楽しい側面もありますが。

 

今年は一作だけ、別に気に入っていた短編をもとに200枚の長編小説を書いて野性時代に送ってみましたが、一次落ちでした……

書評がもらえることを期待して、電撃にでも送ってみようかなと思っています。