狐の嫁入り

小説創作ブログ! のつもりでしたが、なんかだいぶ違う気がします……

粋ですねえ。「本所深川ふしぎ草紙」

 宮部みゆきの江戸物の短編小説です。ちなみに以下、ややネタバレがあるかもしれませんのでご注意を。
 一番気に入った作品は一番最初(*)に収録されている「片葉の葦」です。彦治の一生懸命さが非常に心に残ります。ラストの一人の男として生きていけるようになった彼が、片葉の葦を見て、自分の心の支えになってくれたお美津に思いを馳せるシーンはこの本の中でもっとも感動的でした。
 メインの話はそこですが、メインと絡んでいるサブの話もとても印象的。出だしから死んでしまっていますが、この人もかなりのメインキャラクターなのではないか近江屋藤兵衛。自分的にはこの人が結構好きだったりします。
 自分なりの分析ですが、宮部みゆきの小説は、直接登場しない人物が物語のなかで重要な位置にいるように思います。読んだひとならわかると思いますが、火車なんてそうですよね。ふしぎ草紙の解説にも書いてあったように、最後までヒロインが登場しないという。
 江戸時代の民衆には、大店の主人や娘は雲の上の存在だったのでしょう。そういった人々は社会においても重要な位置をしめ、直接は登場しなくても民衆の生活に多きな影響を与えています。民衆はそういった人々の支配の下でそれぞれの生活を営んでいたのでしょう。ふしぎ草紙は、そのような地位とか名誉を持っている人じゃなく、日々を一生懸命暮らしている人の目線で描かれています。それが、この作品から粋なものを感じることができる理由なのではないでしょうか。
 
 
(*)間違いです。あとからワードの校正機能に見つけてもまいました。ちなみにこれだけの文章で613時。原稿用紙一枚半か、まあよく頑張った。