狐の嫁入り

小説創作ブログ! のつもりでしたが、なんかだいぶ違う気がします……

宮部みゆき「ステップファザー・ステップ」

 今回感想を書くのは、著、宮部みゆきステップファザー・ステップです。僕は講談社文庫のほうで呼んだんですが、この作品はもとは青い鳥文庫から出版された、その名前からも分かるとおり、低い年齢の読者にも分かりやすいように書かれた作品です。実際その内容も軽いもので、取り扱っている事件も、謎解きもいたってライトな感じです。
 僕は、宮部みゆきの作品は、殺人やら複雑な人間の心理やらが関わった、社会の闇を描いたようなものしか読んだことがなかったので、このライトな雰囲気は新鮮な感じでした。さすが大御所と呼ばれるだけあって、こういう作風の作品も面白くかけるんだなあ、と関心しました。

 ストーリーは、盗みに失敗した失敗したところを双子に助けられ、なんだかんだあって彼らの疑似親父を演じるハメになってしまった、腕のいい泥棒の一人称で進められます。子供向けとはいっても、やっぱり泥棒という世間様に対して後ろ暗いところのある人物を主人公にするあたり、宮部みゆきだなあ、と思います。こんなことを思うあたりに、小説が分かる人気分に浸ったりしてます。
 宮部みゆきということでミステリー。ですが、この作品の面白いところはそこじゃなくて、ホームドラマみたいなところにあると思います。双子と「俺」の三人の会話は、読んでいてとても楽しい気分になってくるんです。物語が進むにつれ、疑似親父になることを最初は嫌がっていた「俺」が少しずつ双子たちの仲良くなっていく様子もいい感じ。遺棄児童、泥棒、という不穏なプロフィールをもつキャラクターたちなのにまったくそれを感じさせない身近さがあります。作品全体としてほのぼのとして平和で、最後は前向きな調子に終わっています。そこもまたいい。劇的な展開があるわけじゃないけども、なんだか楽しい、そしてたまに出る気の利いた台詞にグッとくる。そういう作品も結構いいなあと思えました。

 幸せな日常を描いた作品も面白いなあ、と書きましたが、幸せな日常って言うのは、今自分が送っている生活でもあるんですよね。平凡な日常、そしてときどき起こる事件。小説の中ではそれが凄く魅力あるものに感じられましたが、実際はというと、今までの日記にも散々書き散らかしたように、暇です。グダグダです。もしも小説のように事件が起こったとしてもそれは同じことでしょう。
 しかし、こうやって作家の手にかかって物語になると、それが突然美しく尊いものに思えてくる。僕がそういう物語を書こうとしても、きっとつまらない文の羅列になっちゃうんだろうなあと思います。つまり僕が言いたいのは、そういう物語を描ける小説家っていうのは偉大だなあとうことです。